古民家や田舎暮らしに興味をもっている方が多いと感じています。
「田舎暮らしに何を求めるか?!」にもよるのですが、
IターンやUターンといった本格的移住ではなく「新・田舎暮らし」について、
2018年4月に新しく追加された「田園住居地域」、また「不動産の2022問題」「法令改正」等、不動産の近未来と合わせて考察して参ります。
田舎暮らしがしたい
「古民家に住みたい!」「田舎暮らしがしたい!」というお声を、
老若男女問わず、よく聞くようになりました。
ふわっとした「田舎暮らししたいな~」というイメージだけだど、
実際に住んでみたら「あれっ?」ということもよくあります 。
田舎暮らしのイメージは?(メリット)
「田舎暮らしをしたい」といった目的やイメージは、さまざまだと思いますが、
一般的なイメージをピックアップしてみました。
- 山や海を眺めながら、暮らしをしたい
- 綺麗な星空を眺めたい
- 排気ガスなどの少ない空気のよいところで生活したい
- 自然に囲まれたところで子育てをしたい
- 満員電車から解放されたい
- 家庭菜園をしたり、自給自足に近い生活をしたい
- 土地や家を安く購入したい
- 生活費にお金をかけたくない
- 地域の人たちと温かいふれあいをしたい
- 人里離れて、静かに暮らしたい
- 現状から解放されてストレスフリーな生活をしたい
- 自然を相手にした趣味を満喫したい(トレッキングやサーフィン等)
暮らしてみて感じた乖離(デメリット)
思った通りだったというケースもありますが、
実際に思っていたのと違ったという場合もあります。
- 虫が多くでる(アオムシや蚊、蜂、ヘビなど)
- イノシシやシカ、ハクビシン等の動物の被害
- 通院や通勤・通学が遠くて大変(統廃合等、バス停や駅が遠い、本数が極端に少ない)
- 車がないと生活できない(免許の返納問題)
- ガソリン代等の生活費が意外とかかる
- 物価が高い(配送費が等が価格に含まれている、地産地消の商品でも意外に高い)
- 選択肢が少ない(就職、学校や塾、外食や娯楽、食品・日常品等)
- ご近所さんや地域のお付き合いが濃厚すぎる、相性が悪い
- 地域の役割が多く面倒(地域の草刈りや清掃、エリアの組長・役員、祭、消防団等)
- お付き合いの出費が大きい(冠婚葬祭が組内にあれば一律一世帯〇万円支払う等)
- 雪かき(豪雪地帯のケースや、通常の地域でも突然の大雪だと、街までの一本道がなかなか除雪されないなど)
- 高齢になった時(体力の衰え、免許返納時の通院・買い物、介護となったらどうするか)
長所と短所は表裏一体
上記に挙げた通り、長所と短所は表裏一体 で、
例えば、「ご近所さんと、野菜の交換などの温かい交流が魅力的」とメリットと感じるケースもあれば、それを「めんどう」「干渉されすぎる」「相性が合わない」などのデメリットと感じるコトもあります。
住んで初めて分かったということもありますし、
また、先に挙げたメリット・デメリットは、
地域性などもありますので、一概には言えず、リサーチが重要です。
筆者も親戚が田舎住まいですが、「田舎暮らし」と一口に言っても地域によって随分違うもの。田舎の中でも、スーパーなどのあるエリアと、そこから車で一時間程離れた場所では、ご近所づきあい含め、環境が激変することもあります。
「田舎暮らしに何を求めるか」が大切
上手な田舎暮らしには、まず「田舎暮らしに何を求めるか」を明確にすることが大切 です。
「なんとなく田舎暮らしがしたい」といった場合には、一度考えを整理してみるとよいでしょう。
- 自分が田舎暮らしに何を求めるのか、何をしたいのか
- 家族も共感してくれるのか
- デメリットは許容、または解決できるのか
- 経済的に成り立つか 等
100%想定通り!とまではいかなくても、「田舎暮らしに何を求めるか」を明確にすることで、満足のいく選択ができるようになります。
どんな選択肢がある?
どんな「田舎暮らし」をイメージしているかにもよりますが、
選択肢としては、下記のようなケースが考えられます。
- Uターンで田舎暮らし(都会に出てきていたけれど、故郷に帰る)
- Iターンで田舎暮らし(都会から田舎暮らしへ)
- Jターン(都会へ出てきたけれど、地方の中規模な都市へ移住する)
- プレ移住(お試し移住や、週末移住)
- 通勤圏内の田舎暮らし(通勤時間が長いけれど通勤通学等は都内へ、新幹線通勤など)
- 都会の田舎暮らし「とかいなか」
自分に合った暮らしをマッチング
田舎暮らし成功の第一歩は、
自分の求めるものと、環境をマッチングさせることです!
もちろん、田舎暮らしに限らず、住まいを購入する場合には、
自分の状況(希望や資金面、現状)を分析・明確にし、マッチングさせることが重要です。
「田舎暮らしに求めるもの」が明確になるにつれ、上記1~6の「どんな田舎暮らしをするか」の決断しやすくなります。
今回は、主に「6.都会の田舎暮らし」にスポットをあて、
考察して参ります。
「都会の田舎暮らし〝とかいなか〟」
移住の決断は難しい
インターネットの時代となり、職種によっては、
どこでも仕事ができる環境も整いつつあります。
また、ネットショッピングも便利になりました。
とはいえ、
「現在の仕事を継続したい」「子供の教育環境」等を考えると、
地方への移住に二の足を踏んでしまうことも。
今、都会の田舎暮らしが新しい
そこで、じわりと人気が出てきているのが、
「都会の田舎暮らし〝とかいなか〟」です。
「都会の田舎暮らし」とは、
仕事や学校・教育などの拠点は、都心にありながらも、
住まいは田舎っぽい環境のところに住むという選択です 。
先に挙げた「5.通勤圏内での田舎暮らし」とは異なります。
その場合、新幹線通勤だったり、通勤に片道2~3時間かかる等の長時間の通勤となるケースがほとんどです。
ここでいう、「都会の田舎暮らし」は通勤にもなるべく負荷をかけない選択です。
都心までのアクセスがほどよいので、
通勤・通学はもちろん、買い物や病院、エンターテイメント等、都会の良さも謳歌できます。
実は、移住して成功だったと感じる方は、3~5割り程度。
意外に低いと感じるかも知れません。
先に挙げたような田舎暮らしのデメリット等により、「思っていたのとは違った」「自分には合わなかった」と感じ、5~7割程度の人が失敗だったと感じているということです。
本格的な移住をイメージしていると、都会の田舎暮らしでは「これって田舎暮らし?」と違和感を感じるかもしれませんが、移住がマッチングしないケースにおいては、ほどよい「田舎暮らし」ともいえるわけです
都会の田舎暮らしのメリット
- 仕事や学校などの現在の環境を変える必要がない
- 買い物やエンターテイメント、教育・病院などの都会の選択肢の豊富さを享受できる
- 通勤・通学に時間をかけすぎない
- 自宅は、広めの土地や古民家で田舎っぽさを満喫できる
都会の田舎暮らしのデメリット
- 実際の田舎とは違う
- 人間関係などの田舎のような繋がりがない
- 周辺が開発されるなど環境の変化の可能性
どんな物件を選べばいいの?
「都会のよさ」と「田舎のよさ」を、どちらも享受できる「都会の田舎暮らし」をする には、どのような物件を選べばよいのでしょうか。
アクセス
田舎っぽい物件は、駅近にはなかなかありません。
都心から電車で15~20分以上離れた、バス便利用エリアなどがおすすめです。
電車・バス・徒歩や待ち時間なども合わせて、都心までドアtoドアで1時間前後~1時間半位がベター。
あくまで目安ですので、例えば、自転車通勤で40分以内で探す、など、自分なりのルールを明確にしましょう。
徒歩分数に関する参考記事
物件について
土地の広さが150~200㎡以上あると、いいですね!
ガーデニングや家庭菜園ができるスペースも確保でき、状況によっては自然に囲まれている感じが出てきます。
また、車で通勤している場合等、駐車スペースは2台分あるとよりよいでしょう。
とはいえ、都会のバス利用エリアでは、バス便が発達していることも多く便利です。
バス利用エリアに関する参考記事
建物ついて
まずは中古住宅物件を探しましょう。
またポータルサイトなどの「土地」のカテゴリーにも注目!
「古家付土地」として売りに出されている場合もあります。
古家付とは、家の価値はほとんどありませんが、
その家の状況や購入者の価値観によっては、そのまま、もしくはリフォーム・リノベーションして使用するということも考えられます。
古民家が、田舎暮らしをより一層理想に近づけてくれることでしょう。
ただし、当然築年数が経過しているので、
リフォームをしなければ住めないといった場合がほとんどです。
古民家再生には、実は結構値段がかかります。
新築並みか、新築以上のケースも!
中古住宅購入の場合には、
購入前に耐震診断やインスペクション(住宅診断)、リノベーション費用概算をとるなどしてから決断するとよいでしょう。
都市不動産の近未来
田園住居地域の創設
2018年4月より「田園住居地域」という、新しい用途地域が追加されました。
実に四半世紀ぶりの改正です。
田園住居地域とは、住宅と農地が混在し、両者が調和して良好な居住環境と営農環境を形成している地域を、あるべき市街地像として都市計画に位置付け、【開発規制・建築規制】を通じてその実現を図る為に創設されました。
田園住居地域について詳しくはこちら
不動産の2022問題
田園住居地域の創設は、「不動産の2022問題」と言われている「生産緑地」にも関連しています。
生産緑地に指定されているのは、東京などの都市部がほとんど。
その為、都市農地とも呼ばれています。
2022年に生産緑地の期限が切れ、一斉に宅地化されるのでは?と懸念されている問題ですが、生産緑地法等の改正等により「都市農地をあるべきもの」と位置づけに舵を切っています。
田園住居地域の創設もその一翼を担っています。
不動産の2022問題について詳しくはこちら
都市農地で都会の田舎暮らし
新しい用途地域「田園住居地域」では、住居と農地が混在し、農家レストランや直売所の建設も可能になりました。
都会の田舎暮らしを希望する方にとっては、まさに求めていた場所が増え、朗報といえます。
また、2018年4月には農水省が提出した都市農地(生産緑地)を貸しやすくする法案も参議院で可決されています。(衆議院:審議中)
出典:農林水産省 🔗都市農地新法(案)
現在、生産緑地のある地域では、今後、田園住居地域指定が増えていくかも知かもしれません。
法令改正等含め、アンテナ高くチェックしていくとよいでしょう。
田舎暮らしプチ情報
15年以上定住で土地建物もらえる|奥多摩町
東京都の奥多摩町では、「空家を活用した若者定住応援住宅およびいなか暮らし支援住宅の入居者」を募集しています。
年齢や家族構成等の一定の条件を満たすと、15年以上定住にて土地建物を贈与してもらえます。
また、リフォームの補助や利子補給などの制度もあり、興味のある方は条件等、下記をチェックしてみて下さいね!
本年の仮申込受付期間は、2018年6月6日(水)までです。
参考URL
出典:奥多摩町 🔗奥多摩町
🔗若者定住応援住宅・いなか暮らし支援住宅(移住体験住宅)について
🔗申込のしおりH30|空家を活用した若者定住応援住宅およびいなか暮らし支援住宅の入居者を募集
みんなのドラフト移住会議2017
残念ながら終了してしまいましたが、
まさに野球のドラフト会議のように、住みたい人と地域をつなぐ、面白いマッチングイベントですね!
2018年も開催あるのでしょうか?!
参考URL
出典:みんなの移住計画 🔗みんなのドラフト移住会議2017
🔗「移住ドラフト会議」開催 45人を地域が「指名」|朝日新聞デジタル
移住・交流情報ガーデン
総務省が、地方への新しいひとの流れをつくるため、平成27年3月28日に東京駅八重洲口近くに「地方への移住関連情報の提供・相談支援の一元的な窓口」として「移住・交流情報ガーデン」を開設しました。
また、全国の「しごと」や「住まい」などのデータを一元的にわかりやすく提供する「全国移住ナビ」も開設しています。
「移住・交流情報ガーデン」では、「全国移住ナビ」等を活用した相談を実施し、利用者のニーズに応じて地方自治体の窓口に繋いだり、厚生労働省や農林水産省と連携し、しごと情報や就農支援情報を提供しているほか、各地方自治体の移住・交流に関するパンフレット等の閲覧コーナーを設けています。また、週末を中心に地方自治体等による移住・交流に関する相談会やセミナー等が開催されています。
参考URL
まとめ
「田舎暮らし」といっても 、「田舎暮らしに何を求めるか」「自分や家族仕事や学校等の現状」「経済的事情」「田舎暮らしのデメリットは許容できるか」「家族の賛成・協力」「高齢になったらどうするか」等々により、【移住】なのか【お試し移住や週末移住】なのか、【都会の田舎暮らし】なのか、その選択も変わってくることでしょう 。
例えば「家庭菜園がしたい」ということであれば、レンタル農園ということも考えられます。
そういった小さなお試しから、自分に合っているのか確認し、ステップアップしてくのもオススメです!
田舎暮らしに限らず、理想の住宅にたどり着くのは、なかなか難しいものです。
子育てから巣立ち、そして介護や自分自身の老い、などライフステージの変化によっても
ニーズは変わります。
「都会の田舎暮らし」に関しては、
生産緑地問題や田園住居地域の創設など、追い風傾向にあります。
近い将来、「都会の田舎暮らし」は、田舎暮らしを希望する方の選択肢として新スタンダードとなるかも知れませんね。
THDC-Tokyo Housing Distribution Center-
🔗東京住宅流通センター株式会社